不動産の賃貸借契約には「敷金」という用語が当たり前のように使われています。取引の慣習上から生まれたものですが、いわば「預り金」で、契約期間中~退去時の借主の債務の担保、具体的には家賃の滞納や原状回復費用の負担が生じた場合に充当するのが主な目的です。
ではなぜこんな制度が必要なのかというと、日本では借主側が圧倒的に有利だからです。極端に言えば「借りたもの勝ち」の世界で、いったん貸したら半永久的に戻ってこないことも覚悟しなければならないくらいです。定期借地権や定期建物賃貸借といった制度が出来たことで、昔に比べれば改善されたとはいうもののの、お金の貸し借りとは比べ物にならないくらい不公平なのが、日本における不動産賃貸借の世界です。
先ごろ、民法が改正されました。120年ぶりの大改正というのですから驚きますが、その目玉の1つが敷金で、「原則返還」という内容になります。改正後は、現在のように清掃費や修繕費に充当するのは難しくなります。もし必要なら、敷金という名目以外で契約時に受領或いは預託を受けることになります。
個人的にはまず借地借家法を緩和して、貸主側の不良入居者に対する強制退去をしやすくすることが先だと思います。借主=消費者=弱者という認識のもと、過剰な保護をさらに拡大するのは、「義務は果たさないが権利は主張する」人たちを増やすだけですし、そんな特殊社会には健全な事業者が参入してくるとは思えません。皆さんだったら、「家賃を支払わない入居者を退去させるのに1000万円の立ち退き料が必要」なんて言われたら、賃貸物件のオーナーになりますか? で、その分の費用は結局真面目に家賃を払っている人たちが直接的、間接的にしろ負うわけです。それは家賃の上乗せだったり、必要な修繕が後回しになったり。
健全な競争が業界全体の発展につながります。小手先の改革にあくせくするよりも、より大きな視点でテコ入れをしてほしいものです。